診断書は、すぐに依頼する前に確認が必要です
障害年金の申請を考えたとき、
「まず主治医に診断書を書いてもらおう」
「病院へ行けば必要な診断書を用意してもらえるだろう」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、障害年金の診断書には、病気や障害の種類に応じた複数の様式があります。
また、障害認定日による請求か、現在の状態による事後重症の請求かによって、診断書に記載してもらう時点も異なります。
先に診断書を依頼すると、
- 使用する様式が違っていた
- 必要な時点の診断書ではなかった
- 過去と現在の2枚が必要だった
- 現在の医療機関では作成できなかった
といった理由で、取り直しが必要になることがあります。
日本年金機構も、障害年金の要件、使用する診断書の種類、診断書に記載する症状の日付を確認する必要があるため、診断書の作成前に年金事務所などへ相談するよう案内しています。
最初に確認したい5つのこと
診断書を依頼する前に、まず次の5つを確認しましょう。
- 初診日はいつか
- どの傷病について障害年金を請求するか
- どの請求方法を検討するか
- どの診断書様式を使用するか
- いつの状態を診断書に記載してもらうか
これらが決まっていない段階では、医療機関へ正式に診断書を依頼しない方が安心です。
1.初診日を確認しましょう
初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。
現在通院している医療機関を初めて受診した日とは限りません。
以前に同じ病気やけがで別の医療機関を受診していた場合は、その医療機関までさかのぼって確認します。
初診日は、次のことを判断する基準になります。
- 障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを検討するか
- 保険料納付要件を満たしているか
- 障害認定日はいつか
- どの請求方法になるか
- どの時点の診断書が必要か
初診日がはっきりしていない場合は、診断書より先に通院歴を整理しましょう。
2.どの傷病について請求するか確認しましょう
複数の病気やけががある場合、どの傷病について障害年金を請求するのかを整理する必要があります。
たとえば、
- 精神疾患と身体疾患の両方がある
- 最初と現在で病名が変わっている
- 複数の診療科を受診している
- 以前の病気と現在の病気に関係がある
- 複数の障害が日常生活へ影響している
といった場合です。
傷病によって使用する診断書の様式が異なります。
また、複数の傷病を単純に一つにまとめて記載するとは限りません。
どの傷病について、どの診断書を使用するのかを年金事務所などで確認しましょう。
3.請求方法を確認しましょう
障害年金の主な請求方法には、障害認定日による請求と事後重症による請求があります。
障害認定日による請求
原則として、初診日から1年6か月を経過した障害認定日の時点で、障害等級に該当していた場合の請求です。
障害認定日から1年以内に請求する場合は、原則として障害認定日以後3か月以内の状態を記載した診断書を使用します。
障害認定日から長期間が経過した後に、過去へさかのぼって請求する場合は、障害認定日頃の診断書に加え、現在に近い時点の診断書も必要になることがあります。
事後重症による請求
障害認定日には障害等級に該当しなかったものの、その後に症状が重くなった場合の請求です。
原則として、請求日前3か月以内の状態を記載した診断書を使用します。
どちらの請求方法になるかによって、医師に記載してもらう時点が異なります。
自己判断で診断書の日付を決めず、年金事務所などで確認してください。
4.使用する診断書の様式を確認しましょう
日本年金機構では、障害の種類に応じて、主に次の診断書様式を用意しています。
- 眼の障害用
- 聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用
- 肢体の障害用
- 精神の障害用
- 呼吸器疾患の障害用
- 循環器疾患の障害用
- 腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用
- 血液・造血器・その他の障害用
病名だけでは、使用する様式が決まらない場合もあります。
たとえば、がんの場合でも、
- 手術後に肢体の障害が残った
- 言語や嚥下に障害が残った
- 内部疾患として全身状態に大きな影響がある
など、障害の現れ方によって使用する診断書が異なる可能性があります。
年金事務所などで、傷病名と現在の障害の状態を伝え、使用する様式を確認しましょう。
5.診断書に記載してもらう時点を確認しましょう
障害年金の診断書では、「現在の状態」だけを書いてもらえばよいとは限りません。
請求方法によって、次のような時点の診断書が必要になります。
- 障害認定日頃の状態
- 請求日に近い現在の状態
- 障害認定日頃と現在の両方
- 更新手続きの提出期限前3か月以内の状態
- 額改定請求などで指定された期間の状態
現症日とは、診断書に記載された障害の状態を医師が確認した日のことです。
必要な期間から外れた現症日の診断書は、そのまま使用できないことがあります。
診断書を依頼する前に、医師へ何年何月頃の状態を記載してもらう必要があるのか確認しましょう。
診断書を書いてもらう医師を確認しましょう
障害年金の診断書は、原則として、請求する傷病や障害の状態を診察している医師に作成を依頼します。
現在の主治医であっても、
- 通院を始めて間もない
- 障害認定日頃には診察していなかった
- 過去のカルテが残っていない
- 請求する障害とは異なる診療科である
- 現在の障害状態を十分に把握していない
といった場合があります。
過去の障害認定日頃の診断書を依頼する場合は、その当時の状態を診療録などから確認できる医療機関でなければ作成が難しいことがあります。
どの医師に依頼すべきか迷う場合は、現在の医療機関と年金事務所の両方に確認しましょう。
診断書を作成できるか、事前に医療機関へ確認しましょう
医療機関によって、診断書の受付方法や作成期間が異なります。
依頼前に、次のことを確認すると安心です。
- 障害年金の診断書を作成しているか
- 主治医が作成できるか
- 診断書の申し込み方法
- 診察予約が必要か
- 完成までの期間
- 診断書作成費用
- 過去の時点の診断書を作成できるか
- 本人以外が受け取れるか
- 郵送で受け取れるか
医療機関によっては、診断書作成前に改めて診察が必要になる場合があります。
また、完成まで数週間以上かかることもあるため、提出期限がある場合は早めに確認しましょう。
医師は何をもとに診断書を作成しますか
医師は、診察内容、診療録、検査結果、治療経過などをもとに診断書を作成します。
障害年金の診断書では、傷病に応じて、
- 傷病名
- 発病から現在までの経過
- 治療内容
- 検査結果
- 症状
- 身体機能
- 日常生活の状態
- 就労状況
- 予後
などが確認されます。
日本年金機構は、障害等級を適切に決定するため、診断書の内容ができる限り詳細かつ具体的に記載されることが重要であると案内しています。
ただし、診断書は患者本人や家族が作成する書類ではありません。
医師が医学的な判断に基づいて作成します。
日常生活の状況を整理しておきましょう
短い診察時間の中では、日常生活の実際の様子が医師へ十分に伝わっていないことがあります。
診断書を依頼する前に、次のような内容を整理してみましょう。
食事
- 食事を自分で準備できるか
- 家族に用意してもらっているか
- 食べるよう声をかけてもらっているか
- 適切な時間や量の食事を取れているか
入浴・着替え
- 自分から入浴できるか
- 家族の声かけが必要か
- 一人で安全に入浴できるか
- 季節や場所に合う服装を選べるか
掃除・洗濯
- 自分で継続して家事ができるか
- 家族や支援者が代わりに行っているか
- 一人暮らしでも生活環境が悪化していないか
通院・服薬
- 自分で予約や通院ができるか
- 家族の付き添いや送迎が必要か
- 薬を自分で管理できるか
- 飲み忘れを防ぐ声かけが必要か
金銭管理
- 生活費を計画的に使えるか
- 支払いを忘れることがないか
- 家族が通帳や生活費を管理しているか
外出・人との交流
- 一人で安全に外出できるか
- 公共交通機関を利用できるか
- 家族以外の人と意思疎通できるか
- 行政や医療機関とのやり取りを一人で行えるか
「できる・できない」だけでなく、声かけ、見守り、準備、付き添いなど、どのような援助が必要かを整理することが大切です。
良い日と悪い日の両方を伝えましょう
診察の日に身なりを整えて受診できたからといって、普段の生活でも同じ状態とは限りません。
病気やけがによっては、日によって状態が大きく変わります。
次のことを整理しておきましょう。
- 一週間や一か月のうち、調子の悪い日はどの程度あるか
- 悪い日は何ができなくなるか
- 家事や外出後にどのくらい休息が必要か
- 症状の悪化で予定を取りやめることがあるか
- 家族などの援助が増えるのはどのようなときか
- 入院や緊急受診が必要になることがあるか
症状を実際より重く伝える必要はありません。
反対に、遠慮して困りごとを軽く伝えず、良い日と悪い日の両方を含めた普段の状態を正確に説明しましょう。
働いている方が整理したいこと
働いている場合は、単に「会社員です」「パートです」と伝えるだけでは、実際の就労状況が十分に伝わらないことがあります。
次の内容を整理しましょう。
- 一般雇用か障害者雇用か
- 雇用形態
- 勤務日数と勤務時間
- 仕事内容
- 職場で受けている配慮
- 上司や同僚から受けている援助
- 欠勤、遅刻、早退
- 休職や復職の経過
- 業務量や責任の範囲
- 帰宅後や休日の状態
- 家族の援助がなければ働き続けられるか
精神の障害用診断書では、日常生活の制限だけでなく、就労状況についても確認されます。日本年金機構の記載要領でも、疾患名、病歴、治療経過、日常生活能力、就労状況などを関連付けて確認することが示されています。
ご家族から見た状況も確認しましょう
ご本人は、病気や障害のある生活に慣れてしまい、困りごとや受けている援助を自覚しにくいことがあります。
可能であれば、ご家族や身近な方にも次のことを確認してみましょう。
- 家族が代わりに行っていること
- 声かけや見守りが必要なこと
- 一人に任せることが難しいこと
- 以前と比べて変わったこと
- 症状が悪い日の様子
- 外出や仕事後の状態
- 通院や服薬の管理状況
- 安全面で心配なこと
ご本人とご家族の認識が異なる場合もあります。
どちらかを否定するのではなく、それぞれが把握している事実を整理しましょう。
医師へ渡すメモを作ってもよいですか
日常生活や就労状況を整理した簡単なメモを作り、診察時に見ながら説明することはできます。
医療機関によっては、診断書を依頼するときに、生活状況を記載する独自の書類を用意している場合もあります。
メモには、次のような内容を簡潔にまとめます。
- 現在の主な症状
- 症状が悪い日の状態
- 一人でできないこと
- 家族などから受けている援助
- 通院・服薬の管理
- 現在の働き方
- 職場で受けている配慮
- 欠勤・休職・退職の経過
- 前回の診察時から変わったこと
メモは、診断書の記載内容を指定するものではありません。
医師が実際の生活状況を把握するための補助資料として使用します。
医師に書いてほしい内容を指定してもよいですか
診断書の内容や障害等級を、患者側から指定することはできません。
次のような依頼は適切ではありません。
- 2級になるように書いてほしい
- 働いていることを書かないでほしい
- 実際より重い状態として記載してほしい
- 家族の援助がないことにしてほしい
- 診察していない過去の状態を推測で書いてほしい
一方で、
- 氏名や生年月日が誤っている
- 通院期間が明らかに違う
- 現在も服用している薬が記載されていない
- 退職しているのに就労中と書かれている
- 家族が毎日服薬管理をしている事実が伝わっていない
など、事実と異なる記載や明らかな漏れがある場合は、具体的な事実を示して医療機関へ確認できます。
診断書の作成を断られることもありますか
医師が診断書を作成できないと判断する場合があります。
たとえば、
- 通院を始めたばかりで状態を把握できない
- 過去の診療録が残っていない
- 障害認定日頃に診察していない
- 請求する傷病を診療していない
- 必要な検査を行っていない
- 診断書の必要事項を医学的に判断できない
といった場合です。
作成を断られた場合は、理由を確認したうえで、別の医師へ依頼すればよいとすぐに判断せず、年金事務所や社会保険労務士へ相談しましょう。
オンライン診療でも診断書を作成できますか
日本年金機構は、オンライン診療の場合でも、診断書記載要領にある必要事項を記載できる場合は、障害年金の診断書を作成できると案内しています。
ただし、オンライン診療を受けていれば必ず作成できるというものではありません。
症状、検査結果、身体機能、日常生活など、診断書に必要な内容を医師が確認できるかどうかによります。
主治医へ事前に相談してください。
診断書が完成したら提出前に確認しましょう
診断書を受け取ったら、封をされたまま提出するよう医療機関から指定されていない限り、提出前に内容を確認し、コピーを保管しましょう。
少なくとも次の点を確認します。
基本情報
- 氏名に誤りがないか
- 生年月日に誤りがないか
- 住所などの必要事項が記載されているか
- 医療機関名や医師名が記載されているか
日付
- 初診年月日が記載されているか
- 現症日が必要な期間内か
- 診断書の作成日が記載されているか
- 入院・通院期間に誤りがないか
傷病・治療
- 傷病名に明らかな誤りがないか
- 治療内容や服薬状況が現在のものか
- 入院、手術、検査などの経過が記載されているか
日常生活・仕事
- 現在の就労状況に明らかな誤りがないか
- 家族などから受けている援助が医師へ伝わっているか
- 日常生活の状態が、普段説明している内容と大きく異なっていないか
診断内容に納得できないという理由だけで、修正を求めることはできません。
事実誤認や記載漏れがある場合は、提出前に医療機関へ確認しましょう。
診断書とほかの書類との関係を確認しましょう
障害年金の審査では、診断書だけでなく、受診状況等証明書や病歴・就労状況等申立書なども確認されます。
提出前に、次の内容に大きな食い違いがないか確認しましょう。
- 初診日
- 発病時期
- 医療機関名
- 受診期間
- 転院の経過
- 傷病名
- 休職や退職の時期
- 現在の就労状況
- 家族から受けている援助
- 日常生活の状況
書類の表現をすべて同じにする必要はありません。
医師が把握している医学的な内容と、ご本人が説明する生活・就労の経過では、記載する視点が異なります。
ただし、日付や事実関係に大きな違いがある場合は、その理由を確認しておきましょう。
診断書のコピーを保管しましょう
障害年金の診断書は、提出前にコピーまたは画像を保管しておくことをおすすめします。
控えは、次のようなときに役立ちます。
- 提出後に内容を確認するとき
- 日本年金機構から照会があったとき
- 不支給や等級について相談するとき
- 更新手続きをするとき
- 症状の変化を確認するとき
- 社会保険労務士へ相談するとき
医療機関での再発行には、費用や時間がかかることがあります。
診断書だけでなく、提出書類一式の控えを保管しましょう。
診断書の費用について
障害年金の診断書作成費用は、医療機関によって異なります。
健康保険が適用されない文書料として、医療機関が独自に金額を定めているのが一般的です。
過去の障害認定日頃と現在の2枚の診断書が必要な場合は、それぞれに作成費用がかかることがあります。
依頼前に、
- 診断書1枚の費用
- 過去の診断書の費用
- 訂正や再作成時の費用
- 支払時期
を確認しておくと安心です。
よくある思い込み
現在の主治医に頼めばすべて書いてもらえる
現在の主治医が、過去の障害認定日頃の状態を確認できない場合があります。
どの時点の診断書を誰に依頼するか、事前に確認しましょう。
病院へ行けば診断書の様式を用意してもらえる
医療機関が障害年金の所定様式を用意しているとは限りません。
原則として、年金事務所などで請求方法と様式を確認してから依頼します。
診断書があれば障害年金を受給できる
診断書は重要な書類ですが、初診日、保険料納付要件、病歴・就労状況等申立書なども含めて審査されます。
診断書が作成されたことだけで、支給は決まりません。
医師が申請できると言えば受給できる
医師は医学的な状態を診断書に記載します。
障害年金の支給や等級は、日本年金機構などが提出書類をもとに審査して決定します。
困りごとは診断書の依頼日にだけ伝えればよい
医師は日頃の診察内容や診療録も参考にします。
普段の診察から、生活や仕事の状況を具体的に伝えておくことが大切です。
診断書を依頼する前の確認リスト
年金制度について
- 初診日が確認できている
- 初診日に加入していた年金制度がわかる
- 保険料納付要件を確認している
- 障害認定日がわかる
- 請求方法を確認している
診断書について
- 使用する診断書様式がわかる
- 記載してもらう時点がわかる
- 診断書が1枚か2枚か確認している
- 作成を依頼する医師を確認している
- 医療機関の作成期間と費用を確認している
医師へ伝える内容について
- 現在の症状を整理している
- 日常生活の困りごとを整理している
- 家族などから受けている援助を整理している
- 良い日と悪い日の差を整理している
- 現在の就労状況を整理している
- 職場で受けている配慮を整理している
- 前回から変化したことを整理している
すべてを一人で確認することが難しい場合は、年金事務所や社会保険労務士へ相談できます。
診断書の依頼について相談したい方へ
eNENKIN.netでは、障害年金の診断書を依頼する前の準備について相談できる社会保険労務士の情報を掲載しています。
対応地域、相談方法、主な相談内容、費用の目安などを確認しながら、ご自身やご家族の状況に合う相談先をお探しいただけます。
相談するときは、わかる範囲で次の内容を伝えるとよいでしょう。
- 現在の病名と症状
- 初診日または初診日と思われる時期
- これまでに受診した医療機関
- 現在通院している医療機関
- 年金事務所で書類を受け取っているか
- 使用する診断書の様式が決まっているか
- 障害認定日による請求か事後重症か
- 日常生活で困っていること
- 現在の就労状況
- 医師へ診断書の相談をしたことがあるか
すべてを整理できていなくても相談できます。
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障害年金の診断書は、傷病や障害の種類、請求方法、障害認定日、請求時期などによって、使用する様式や記載してもらう時点が異なります。
診断書を医療機関へ依頼する前に、年金事務所などで次の内容を確認してください。
- 使用する診断書様式
- 診断書に記載してもらう時点
- 必要となる診断書の枚数
- 作成を依頼する医療機関
- ほかに必要となる書類
診断書は医師が医学的な判断に基づいて作成します。
患者側が障害等級や記載内容を指定したり、事実と異なる記載を求めたりすることはできません。
正式な手続きについては、年金事務所、街角の年金相談センター、または障害年金を扱う社会保険労務士へご相談ください。