障害年金は、幅広い病気やけがが対象となる可能性があります
障害年金は、手足や目、耳などの身体の障害だけを対象とする制度ではありません。
精神の病気、発達障害、知的障害、心臓や腎臓などの内部疾患、がんや難病など、さまざまな病気やけがが対象となる可能性があります。
大切なのは、病名そのものだけではありません。
その病気やけがによって、日常生活や仕事にどの程度の制限が生じているか、治療を続けてもどのような症状が残っているかなどが、傷病ごとの認定基準に沿って個別に確認されます。
「この病気は障害年金の対象にならないのではないか」
「障害者手帳を持っていないから申請できない」
「働いているから対象外になる」
と、ご自身だけで判断する必要はありません。
まずは、ご自身の病気やけががどのような区分に当てはまるのか、生活や仕事にどのような影響があるのかを整理してみましょう。
対象となる病気やけがの主な区分
日本年金機構では、障害年金の対象となる病気やけがを、大きく次のように案内しています。
- 目や耳、手足などの外部障害
- 精神障害
- 心臓や腎臓などの内部障害
ここで掲載する傷病名は、代表的な例です。
掲載されていない病気やけがでも、障害の状態が認定基準に該当すれば、障害年金の対象となる可能性があります。
反対に、掲載されている病名の診断を受けていても、それだけで障害年金を受けられるとは限りません。
眼の障害
病気やけがによって視力や視野に障害が残っている場合は、障害年金の対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 網膜色素変性症
- 糖尿病網膜症
- 緑内障
- 白内障
- 黄斑変性症
- 視神経萎縮
- 網膜剥離
- ベーチェット病による眼の障害
- 事故や外傷による視力・視野の障害
眼の障害では、矯正後の視力、視野、病気の状態などが確認されます。
片方の目だけに障害がある場合や、左右の目で状態が異なる場合も、認定基準に沿って個別に確認されます。
聴覚の障害
病気やけがによって聴力に障害が残っている場合は、障害年金の対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 感音性難聴
- 突発性難聴
- 先天性難聴
- 老人性難聴
- メニエール病
- 薬剤性難聴
- 事故や外傷による聴覚障害
聴覚の障害では、聴力レベルや言葉を聞き分ける能力などが確認されます。
補聴器を使用しているかどうかだけで判断されるものではありません。
平衡機能の障害
身体のバランスを保つ機能に障害があり、立つことや歩くことなどに支障がある場合は、対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- メニエール病
- 前庭神経炎
- 脳や神経の病気による平衡機能障害
- 事故や外傷による平衡機能障害
めまいがあるという症状だけではなく、立位や歩行への影響、日常生活上の制限などを含めて確認されます。
そしゃく・嚥下・言語機能の障害
食べ物をかむこと、飲み込むこと、言葉を話すことなどに障害がある場合は、対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 舌や口腔、あごの病気やけが
- 咽頭や喉頭の病気
- 脳血管障害による失語症
- 神経や筋肉の病気による嚥下障害
- がんの手術後に残った言語・嚥下障害
- 事故や外傷による障害
実際にどのような食事ができるか、意思をどの程度伝えられるかなどが確認されます。
肢体の障害
手足や体幹の機能に障害があり、立つ、歩く、物を持つ、着替えるなどの動作に支障がある場合は、対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 脳梗塞・脳出血などの脳血管障害
- 脳性麻痺
- 脊髄損傷
- 関節リウマチ
- 筋ジストロフィー
- 多発性硬化症
- パーキンソン病
- 筋萎縮性側索硬化症
- 変形性関節症
- 手足の切断
- 事故や外傷による機能障害
- 人工関節や人工骨頭の置換
- 遷延性意識障害
肢体の障害では、筋力や関節の動きだけでなく、立ち上がる、歩く、食事をする、着替えるなど、日常生活の動作も確認されます。
人工関節や人工骨頭を入れた場合も、手術を受けたという事実だけで等級が決まるわけではありません。
精神の障害
精神の病気によって、日常生活や社会生活、仕事などに大きな支障がある場合は、対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 統合失調症
- うつ病
- 双極性障害
- てんかん
- 器質性精神障害
- 高次脳機能障害
- 若年性認知症を含む認知障害
- 知的障害
- 発達障害
精神の障害では、病名や症状だけでなく、食事、身の回りのこと、金銭管理、通院や服薬、人との交流、安全の確保など、日常生活能力の状態が確認されます。
働いている場合は、仕事内容、勤務状況、職場で受けている配慮や援助なども含めて確認されます。
神経症について
不安障害、適応障害、パニック障害、強迫性障害など、一般に神経症と分類される傷病については、原則として障害年金の認定対象にならないとされています。
ただし、その症状が重く、診断書に精神病の病態を示していると医師が記載している場合などは、精神の障害として認定の対象となる可能性があります。
病名だけでご自身が対象になるかを判断せず、診断内容や症状、生活状況を確認する必要があります。
発達障害
発達障害によって、日常生活や社会生活、仕事などに大きな支障がある場合は、対象となる可能性があります。
主なものには、次のような障害があります。
- 自閉スペクトラム症
- 注意欠如・多動症
- 学習障害
- その他の広汎性発達障害
発達障害は、生まれつきの特性であっても、初めて医師の診療を受けた日が初診日として確認されます。
診断を受けた時期が成人後の場合もあります。
認定では、社会性、意思疎通、日常生活、就労、周囲から受けている援助などを総合的に確認します。
知的障害
知的障害によって、日常生活や社会生活に継続的な支援が必要な場合は、対象となる可能性があります。
知的障害は、原則として出生日が初診日として扱われます。
認定では、知能指数だけでなく、日常生活能力、意思疎通、社会生活への適応、周囲から受けている援助などが確認されます。
療育手帳を持っているかどうかや、手帳の等級だけで、障害年金の等級が決まるわけではありません。
てんかん
てんかんによる発作や、そのほかの症状によって日常生活や仕事に支障がある場合は、対象となる可能性があります。
認定では、発作の種類、頻度、治療状況、服薬状況、日常生活や就労への影響などが確認されます。
発作があるという事実だけでなく、適切な治療を続けているか、治療を行ってもどのような発作が残っているかなども重要になります。
呼吸器疾患による障害
肺や気管支などの病気によって、呼吸機能が低下している場合は、対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 慢性閉塞性肺疾患
- 肺結核
- 間質性肺炎
- 気管支喘息
- 肺線維症
- じん肺
- 肺がん
- その他の慢性呼吸不全
認定では、呼吸機能検査、動脈血ガス分析、治療内容、在宅酸素療法の有無、日常生活や労働への影響などが確認されます。
在宅酸素療法を行っているという事実だけで、等級が自動的に決まるものではありません。
心疾患による障害
心臓の病気によって、日常生活や仕事に大きな制限がある場合は、対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 心筋症
- 心不全
- 心臓弁膜症
- 先天性心疾患
- 重い不整脈
- 大動脈疾患
- 心臓移植後の状態
ペースメーカー、植込み型除細動器、人工弁などを使用している場合も対象となる可能性があります。
認定では、検査結果、治療内容、人工物の装着状況、症状、日常生活や労働への影響などが確認されます。
腎疾患による障害
腎臓の病気によって腎機能が低下し、日常生活や仕事に制限がある場合は、対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 慢性腎不全
- 慢性糸球体腎炎
- 糖尿病性腎症
- ネフローゼ症候群
- 多発性嚢胞腎
- その他の腎疾患
人工透析を受けている方も、障害年金の対象となる可能性があります。
認定では、検査数値、治療内容、透析の状況、一般状態、日常生活や労働への影響などが確認されます。
肝疾患による障害
肝臓の病気によって、日常生活や仕事に大きな制限がある場合は、対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 肝硬変
- 慢性肝炎
- 肝がん
- 自己免疫性肝炎
- 原発性胆汁性胆管炎
- その他の慢性肝疾患
認定では、検査数値、治療内容、腹水や黄疸などの症状、一般状態、日常生活や労働への影響などが確認されます。
血液・造血器疾患による障害
血液や造血器の病気によって、強い貧血、出血、感染症などが生じ、生活や仕事に支障がある場合は、対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 白血病
- 悪性リンパ腫
- 多発性骨髄腫
- 再生不良性貧血
- 骨髄異形成症候群
- 血友病
- 血小板減少性紫斑病
- その他の血液・造血器疾患
認定では、血液検査の結果、治療内容、輸血の状況、症状、日常生活や労働への影響などが確認されます。
糖尿病による障害
糖尿病によって、血糖の管理が難しい状態や、さまざまな合併症が生じている場合は、対象となる可能性があります。
主な合併症には、次のようなものがあります。
- 糖尿病性網膜症
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病による足の壊疽
- その他の合併症
糖尿病による障害は、合併症の種類や障害の現れ方によって、眼、腎疾患、肢体など、異なる認定基準で確認される場合があります。
血糖値が高いということだけで、障害年金の対象となるわけではありません。
がんによる障害
がんによって日常生活や仕事に大きな制限がある場合は、対象となる可能性があります。
がんの種類や進行度だけでなく、次のような状態も確認されます。
- がんそのものによる症状
- 手術後に残った障害
- 抗がん剤や放射線治療などの副作用
- 強い倦怠感や痛み
- 食事や栄養摂取への影響
- 日常生活や仕事への制限
手術後に視力、聴力、言語、嚥下、肢体などの障害が残った場合は、その障害に対応する認定基準で確認されることがあります。
がんと診断されたことだけで、障害年金の対象となるわけではありません。
難病による障害
難病に指定されている病気や、治療が難しい慢性疾患も、障害年金の対象となる可能性があります。
主な傷病の例には、次のようなものがあります。
- 多発性硬化症
- 筋萎縮性側索硬化症
- パーキンソン病
- 重症筋無力症
- 全身性エリテマトーデス
- 強皮症
- クローン病
- 潰瘍性大腸炎
- ベーチェット病
- その他の難病
難病に指定されているかどうかだけで、障害年金の対象になるかが決まるわけではありません。
病気によって生じている具体的な障害や症状に応じて、該当する認定基準で確認されます。
その他の病気やけが
障害認定基準には、「その他の疾患による障害」という区分もあります。
特定の区分だけでは判断しにくい病気やけがについても、症状、治療経過、一般状態、日常生活や労働への影響などから、対象となる可能性があります。
たとえば、慢性疲労や強い痛み、複数の臓器にわたる症状などによって生活や仕事に大きな制限がある場合は、個別に確認が必要です。
ただし、症状があることだけで対象となるわけではありません。
医師の診断や治療記録などをもとに、障害認定基準に該当する状態かが確認されます。
病気が治っていなくても請求できる場合があります
障害年金について、
「病気が治ってからでなければ申請できない」
「治療中は申請できない」
と思われることがあります。
しかし、障害年金は、病気やけがが完全に治っていることを一律の条件とする制度ではありません。
原則として、初診日から1年6か月を経過した障害認定日以後に、法令で定める障害の状態に該当していれば、治療を続けている方も請求を検討できます。
病気やけがの内容によっては、1年6か月を待たずに障害認定日となる場合もあります。
障害者手帳がなくても申請できます
障害年金と障害者手帳は、目的や認定基準が異なる制度です。
障害者手帳を持っていない方も、障害年金を申請できます。
また、障害者手帳を持っている場合でも、手帳の等級と障害年金の等級が同じになるとは限りません。
手帳の有無や等級だけで、ご自身が障害年金の対象になるかを判断しないことが大切です。
働いている方も対象となる可能性があります
働いていることだけで、障害年金の対象外になるわけではありません。
ただし、傷病によっては、働いている状況が障害の程度を確認するための重要な材料となります。
働いている方は、次のようなことを整理してみましょう。
- 雇用形態
- 勤務時間と勤務日数
- 仕事内容
- 職場で受けている配慮
- 上司や同僚から受けている援助
- 欠勤、遅刻、早退の状況
- 休職歴
- 帰宅後や休日の状態
- 家族から受けている援助
収入や勤務時間だけで判断されるものではありません。
複数の病気やけががある場合
複数の病気やけががある場合、それぞれの傷病の障害を単純に足して、障害等級を決めるわけではありません。
次のような点によって取扱いが異なります。
- それぞれの初診日
- 傷病同士の関係
- それぞれの障害の状態
- すでに障害年金を受けているか
- 複数の障害を合わせた場合の状態
複数の傷病がある方は、傷病ごとに初診日、受診歴、現在の症状を分けて整理しましょう。
対象となる可能性を考えるために
まずは、次の項目をわかる範囲で確認してみましょう。
病気やけがについて
- 現在の病名
- 主な症状
- 症状が始まった時期
- 初めて医療機関を受診した時期
- 現在受けている治療
- 入院や手術の経過
日常生活について
- 一人でできないこと
- 家族などの援助が必要なこと
- 外出や人との交流の状況
- 服薬や通院の管理
- 食事、入浴、着替え、家事などの状況
- 症状が悪い日の過ごし方
仕事について
- 現在働いているか
- 勤務時間と勤務日数
- 仕事内容
- 職場で受けている配慮
- 欠勤、休職、退職の経過
- 仕事後や休日の状態
病名だけでなく、病気やけがによって実際に何に困っているのかを整理することが大切です。
よくある思い込み
一覧に病名がないと対象にならない
このページに掲載している病名は、代表的な例です。
掲載されていない病気やけがでも、障害の状態が認定基準に該当すれば、対象となる可能性があります。
病名が一覧にあれば受給できる
病名だけで受給が決まるわけではありません。
初診日、保険料納付要件、障害の状態などが個別に確認されます。
難病に指定されていれば受給できる
難病の指定と障害年金は別の制度です。
難病に指定されていることだけで、障害年金の対象となるわけではありません。
障害者手帳が必要になる
障害者手帳を持っていない方も障害年金を申請できます。
働いていると対象外になる
働いていることだけで対象外になるわけではありません。
実際の勤務状況や職場で受けている配慮、日常生活の状態などを含めて確認されます。
ご自身の病気やけがについて相談したい方へ
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相談するときは、わかる範囲で次の内容を伝えるとよいでしょう。
- 現在の病名
- 主な症状
- 初診日または初診日と思われる時期
- これまでに受診した医療機関
- 現在受けている治療
- 日常生活で困っていること
- 家族などから受けている援助
- 現在の就労状況
- 障害者手帳の有無
- 過去に障害年金を申請したことがあるか
すべてを整理できていなくても相談できます。
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このページに掲載している病気やけがは、障害年金の対象となる可能性がある傷病の代表例です。
掲載されている病名の診断を受けていることだけで、障害年金の受給が決まるものではありません。また、掲載されていない病気やけがが一律に対象外となるものでもありません。
障害年金は、初診日、保険料納付要件、傷病ごとの障害認定基準、診断書などの提出書類をもとに個別に審査されます。
正式な認定基準やご自身の手続きについて確認したい場合は、年金事務所、街角の年金相談センター、または障害年金を扱う社会保険労務士へご相談ください。