「できる・できない」だけで考えなくても大丈夫です
病気やけがによる日常生活の困りごとは、ご本人にとって当たり前になっていることがあります。
「一人で食事をしている」
「仕事には行っている」
「自分で通院している」
という場合でも、実際には家族の準備や声かけが必要だったり、行動した後に長い休息が必要だったりすることがあります。
障害年金では、病名だけではなく、病気やけがによって日常生活や仕事にどの程度の制限が生じ、どのような援助を必要としているかが確認されます。日本年金機構も、日常生活に継続的な制限があり、支援が必要な状態を障害状態として捉え、その程度に応じて障害等級を判断すると説明しています。
このページでは、普段の生活で困っていることや、周囲から受けている援助を整理してみましょう。
まず、普段の生活を振り返ってみましょう
日常生活について考えるときは、特別に調子のよい日だけではなく、普段の状態を振り返ることが大切です。
次のような視点で考えてみましょう。
- 一人で安定してできるか
- 時間をかければできるか
- 声をかけてもらえばできるか
- 誰かに準備してもらえばできるか
- 途中まで手伝ってもらっているか
- すべて代わりに行ってもらっているか
- 行った後に長く休む必要があるか
- 調子が悪い日はできないことがあるか
単に「できる」と答えるのではなく、どのような条件や援助があればできるのかを整理してみましょう。
食事について
次のような困りごとはありませんか。
- 食事を自分で用意できない
- 献立を考えることが難しい
- 買い物に行けない
- 火や包丁を安全に使えない
- 食事を用意されても食べられないことがある
- 食事を取るよう声をかけてもらっている
- 食べる時間が不規則になっている
- 同じものばかり食べている
- 栄養の偏りを家族に確認してもらっている
- 食事中に見守りや介助が必要である
- 食べ物をかむことや飲み込むことが難しい
- 疲労や痛みで食事を最後まで続けられない
「自分で食べられる」という場合でも、誰が食事を準備しているか、適切な時間に必要な量を食べられているかを考えてみましょう。
整理するときの例
食事は自分で食べられますが、献立を考えたり調理したりすることはできません。家族が毎日用意し、食べるよう声をかけています。
入浴・洗面・着替えについて
次のような困りごとはありませんか。
- 入浴する気力が起きない
- 何日も入浴できないことがある
- 入浴するよう家族に促されている
- 一人で浴室に入ることが危険である
- 浴槽をまたぐことが難しい
- 体や髪を十分に洗えない
- 入浴後に強い疲労や痛みが出る
- 洗顔や歯磨きを忘れる
- 季節や場所に合う服を選べない
- 同じ服を何日も着ている
- ボタンやファスナーを扱えない
- 着替えに時間がかかる
- 家族に衣類を準備してもらっている
入浴や着替えができる場合でも、頻度、所要時間、安全性、声かけの有無などを整理しましょう。
整理するときの例
一人で入浴できますが、疲労が強いため週に一度程度です。家族から何度か声をかけてもらわないと入浴できません。
掃除・洗濯・片付けについて
次のような困りごとはありませんか。
- 部屋を掃除できない
- ごみを出せない
- ごみや衣類が部屋にたまっている
- 洗濯機を操作できない
- 洗濯物を干したり取り込んだりできない
- 片付けの手順がわからない
- 何から始めればよいかわからず動けない
- 少し家事をすると寝込んでしまう
- 重いものを持てない
- 高い所や低い所の掃除ができない
- 家族が定期的に訪問して家事をしている
- 訪問介護などの支援を利用している
一人暮らしをしていても、実際には家事ができず、生活環境が悪化していることがあります。
整理するときの例
一人暮らしですが、掃除や洗濯はほとんどできていません。週末に家族が訪問し、まとめて行っています。
通院・服薬について
次のような困りごとはありませんか。
- 自分で医療機関を予約できない
- 予約日を忘れてしまう
- 一人で通院できない
- 家族に送迎や付き添いをしてもらっている
- 症状を医師へうまく説明できない
- 家族が診察時に状況を補足している
- 薬の種類や飲む時間を管理できない
- 薬を飲み忘れる
- 薬を多く飲んでしまうことがある
- 家族に薬を準備してもらっている
- 服薬するよう毎日声をかけてもらっている
- 体調が悪くても受診の判断ができない
一人で病院へ行っている場合でも、予約、交通手段、服薬管理などを誰が支えているか確認しましょう。
整理するときの例
通院は一人でできますが、予約日は家族が管理しています。薬も一週間分ずつ家族に分けてもらい、毎日電話で確認してもらっています。
金銭管理・買い物について
次のような困りごとはありませんか。
- 生活費を計画的に使えない
- 必要な支払いを忘れる
- 公共料金や家賃を滞納することがある
- 衝動的に買い物をしてしまう
- 同じものを何度も買ってしまう
- 必要な物を選べない
- 金額の計算が難しい
- 財布や通帳をなくすことがある
- 契約内容を理解しにくい
- 詐欺や不要な契約を避けることが難しい
- 家族が通帳や生活費を管理している
- 買い物に付き添ってもらっている
- 成年後見制度などを利用している
収入がある、買い物へ行けるというだけで、適切に金銭を管理できているとは限りません。
整理するときの例
自分で買い物には行けますが、必要のない物を購入してしまうため、家族から一週間分の生活費だけを受け取っています。
外出・移動について
次のような困りごとはありませんか。
- 一人で外出できない
- 道に迷ってしまう
- 公共交通機関を利用できない
- 家族による送迎が必要である
- 杖や車いすなどを使用している
- 階段の上り下りが難しい
- 長い距離を歩けない
- 外出すると強い疲労や痛みが出る
- 人混みや音が怖く、外出できない
- 不安や発作が起きるため付き添いが必要である
- 病院や職場以外にはほとんど外出しない
- 外出後、数日間休まなければならない
「一人で外出したことがある」という一度の経験だけではなく、普段どのくらい安定して外出できるかを振り返りましょう。
整理するときの例
近所のコンビニには一人で行けますが、電車には一人で乗れません。通院時は家族が付き添っています。
人との交流・意思疎通について
次のような困りごとはありませんか。
- 人と話すことに強い不安がある
- 相手の話を理解することが難しい
- 自分の考えや体調をうまく伝えられない
- 電話やメールへの対応ができない
- 家族以外の人とほとんど交流がない
- 人間関係のトラブルを繰り返す
- 相手の表情や意図を読み取れない
- 感情を抑えることが難しい
- 集団の中にいることができない
- 医療機関や行政機関とのやり取りを家族に任せている
- 説明を受けても内容を理解できない
- 状況に応じた行動を取ることが難しい
交流の人数だけではなく、実際に意思疎通ができているか、周囲の仲介や説明が必要かを整理しましょう。
安全を保つことについて
次のような困りごとはありませんか。
- 火の消し忘れがある
- 戸締まりを忘れる
- 道路を安全に横断できない
- 転倒することがある
- 発作や意識を失うことがある
- 危険な状況を判断できない
- 体調が悪化していても助けを求められない
- 一人にしておくことが難しい
- 衝動的な行動を取ることがある
- 自分を傷つけるおそれがある
- 家族が定期的に電話や訪問で確認している
- 緊急通報サービスや見守りサービスを利用している
安全に関わる内容は、ご本人が困りごととして認識していない場合もあります。可能であれば、ご家族や支援者にも確認してみましょう。
規則的な生活について
次のような困りごとはありませんか。
- 朝起きることができない
- 昼夜が逆転している
- 家族に起こしてもらっている
- 食事や服薬の時間が不規則である
- 予定を立てられない
- 予定を覚えていられない
- 予定どおりに行動できない
- 気分や体調によって生活が大きく変わる
- 一日中横になっていることが多い
- 何もせず時間が過ぎてしまう
- 声をかけられなければ行動を始められない
- 生活の予定を家族や支援者が管理している
仕事や通院など、決められた予定に出かけられる場合でも、それ以外の生活がどのようになっているかを確認しましょう。
身体の痛み・疲労・息苦しさなどについて
内部疾患や難病などでは、外見から困りごとがわかりにくい場合があります。
次のような状態はありませんか。
- 少し動くだけで強く疲れる
- 長時間立っていられない
- 頻繁に横になる必要がある
- 息切れや動悸がある
- 痛みで眠れない
- 手足に力が入らない
- 症状のため家事や外出を途中でやめる
- 入浴や着替えだけで疲れ切ってしまう
- 翌日まで疲労が残る
- 定期的な治療や処置が生活を制限している
- 症状の悪化を避けるため活動を制限している
- 家族に重い物や家事を任せている
障害認定基準では、病気の種類に応じ、検査結果や治療経過だけでなく、具体的な日常生活の状況なども踏まえて総合的に認定することとされています。
家族や周囲から受けている援助を整理しましょう
日常生活が送れているように見えても、周囲の援助によって成り立っていることがあります。
次のような援助を受けていないか確認しましょう。
- 食事を準備してもらっている
- 入浴や着替えを促してもらっている
- 掃除や洗濯をしてもらっている
- 薬を管理してもらっている
- 通院に付き添ってもらっている
- 金銭を管理してもらっている
- 手続きや書類を代わりに確認してもらっている
- 外出時に付き添ってもらっている
- 毎日電話やメッセージで確認してもらっている
- 症状が悪いときに見守ってもらっている
- 福祉サービスを利用している
- 職場で継続的な配慮や援助を受けている
援助を受けていることは、恥ずかしいことではありません。
その援助がなかった場合、生活がどうなるかも考えてみましょう。
同居していなくても援助になることがあります
ご家族と別に暮らしていても、次のような支援を受けていることがあります。
- 毎朝、起きたか電話で確認してもらう
- 食事や日用品を届けてもらう
- 週末に掃除や洗濯をしてもらう
- 通院日に付き添ってもらう
- 支払いや契約を管理してもらう
- 郵便物を確認してもらう
- 緊急時に来てもらう
- 医療機関や支援機関と連絡を取ってもらう
一人暮らしをしていることだけで、日常生活に支障がないと決まるわけではありません。
良い日と悪い日の差を整理しましょう
病気やけがによっては、日によって状態が大きく変わることがあります。
次のことを振り返ってみましょう。
- 一週間のうち、調子の悪い日は何日くらいあるか
- 一か月のうち、寝込む日はどのくらいあるか
- 症状が悪い日は何ができなくなるか
- 症状が悪くなるきっかけはあるか
- 外出や仕事の後、どのくらい休息が必要か
- 急な予定変更に対応できるか
- 季節や天候によって状態が変わるか
- 調子の悪いとき、誰に助けてもらっているか
診察の日に受診できたことや、一度だけ家事ができたことだけでは、普段の生活状況を十分に表せない場合があります。
良い日と悪い日の両方を含め、一定期間の実際の状態を整理しましょう。
「できる」と答える前に確認したいこと
日常生活の各項目について、次の5段階で考えると整理しやすくなります。
1.一人で問題なくできる
特別な援助や声かけがなくても、適切かつ継続的にできます。
2.時間をかければ一人でできる
通常より時間がかかったり、行った後に休息が必要だったりします。
3.声かけや準備があればできる
家族などの声かけ、予定管理、道具の準備などが必要です。
4.一部の援助が必要
行動の一部を手伝ってもらったり、見守ってもらったりしています。
5.ほとんど、またはすべての援助が必要
自分だけでは行うことが難しく、家族や支援者が代わりに行っています。
これは障害等級を自己判定するための点数表ではありません。
普段の状態や必要な援助を、具体的に整理するための目安として使用してください。
1週間の生活を記録してみましょう
記憶だけで振り返ることが難しい場合は、1週間程度の生活を簡単に記録する方法があります。
| 日付 | できたこと | できなかったこと | 受けた援助 | 症状・疲労 |
|---|---|---|---|---|
| 月曜日 | 通院した | 掃除、入浴 | 家族の送迎 | 帰宅後は横になった |
| 火曜日 | 食事を取った | 外出、洗濯 | 食事を用意してもらった | 一日中強い疲労 |
| 水曜日 | 短時間勤務 | 夕食の準備 | 上司が業務を調整 | 帰宅後すぐ就寝 |
毎日細かく記録する必要はありません。
特に困ったこと、援助を受けたこと、体調が大きく変化したことを書き留めるだけでも、状況を伝えやすくなります。
医師に伝えるときは具体的に
医師へ生活状況を伝えるときは、
「何もできません」
「日常生活が大変です」
という表現だけでは、実際の状況が伝わりにくいことがあります。
次のように、具体的な状況を伝えましょう。
- 入浴は週に一度で、家族の声かけが必要
- 食事は家族が毎日準備している
- 一人で電車に乗れず、通院には家族が付き添っている
- 薬は家族が一週間分ずつ管理している
- 掃除や洗濯ができず、家族が週末に行っている
- 仕事には行けるが、帰宅後と休日はほとんど寝ている
- 月に数日は症状が悪化し、起き上がれない
- 買い物はできるが、金銭管理は家族に任せている
診断書の内容を患者側が指定することはできませんが、医師が実際の生活状況を把握できるよう、普段の診察から正確に伝えることが大切です。
ご家族にも確認してみましょう
ご本人は、自分が受けている援助に気づいていないことがあります。
可能であれば、ご家族や身近な方にも次のことを聞いてみましょう。
- 家族が代わりに行っていること
- 声かけや見守りが必要なこと
- 一人に任せることが難しいこと
- 以前と比べて変わったこと
- 症状が悪い日の様子
- 家族が心配していること
- 安全上の問題があったこと
- 外出や仕事後の状態
ご本人とご家族の認識が異なる場合は、どちらか一方を否定せず、それぞれが把握している状況を書き留めておきましょう。
仕事をしている方は、仕事以外の生活も確認しましょう
働いている場合は、仕事中の状況だけでなく、仕事を続けるために生活のほかの部分がどのようになっているかも整理します。
- 家族に起こしてもらっている
- 通勤の送迎をしてもらっている
- 食事や家事をすべて家族に任せている
- 帰宅後は何もできない
- 休日は一日中寝ている
- 職場で業務を軽くしてもらっている
- 欠勤や早退が多い
- 周囲の援助がなければ勤務を続けられない
仕事に行けるということだけで、日常生活に支障がないとは限りません。
病歴・就労状況等申立書を作成するとき
障害年金の請求では、発病から現在までの受診経過や就労状況などを記載する「病歴・就労状況等申立書」を提出するのが一般的です。
このページで整理した内容のうち、次のようなことは申立書を作成する際の参考になります。
- 病気やけがによってできなくなったこと
- 症状が悪化した時期
- 家族から受けていた援助
- 仕事や学校への影響
- 休職、復職、退職の経過
- 通院していなかった期間の生活状況
- 現在の日常生活と就労状況
実際に記載するときは、診断書や受診歴との関係を確認し、事実に沿ってまとめましょう。
よくある思い込み
一人暮らしをしているので、日常生活に問題はない
一人暮らしでも、家事ができていない、家族が定期的に支援している、生活環境が悪化しているといった場合があります。
実際の生活状況を確認することが大切です。
仕事へ行けているので、困りごとはない
仕事をするために力を使い切り、帰宅後や休日に何もできない方もいます。
職場で受けている配慮や、家庭で受けている援助も整理しましょう。
時間をかければできるので「できる」と答える
非常に長い時間がかかる、強い疲労や痛みを伴う、翌日まで動けなくなる場合は、その状況も重要です。
家族の声かけは援助に含まれない
声かけ、見守り、予定管理、服薬確認なども、生活を支える援助です。
調子が悪い日だけを書くと大げさになる
良い日だけ、または悪い日だけを書くのではなく、両方を含めた普段の状態を整理しましょう。
日常生活の困りごとについて相談したい方へ
eNENKIN.netでは、障害年金について相談できる社会保険労務士の情報を掲載しています。
対応地域、相談方法、主な相談内容、費用の目安などを確認しながら、ご自身やご家族の状況に合う相談先をお探しいただけます。
相談するときは、わかる範囲で次の内容を伝えるとよいでしょう。
- 現在の病名や症状
- 一人でできないこと
- 時間をかければできること
- 家族などから受けている援助
- 通院や服薬の管理状況
- 外出や人との交流の状況
- 良い日と悪い日の差
- 現在の就労状況
- 職場で受けている配慮
- 医師へ生活状況を伝えているか
すべてを整理できていなくても相談できます。
▶︎▶︎相談できる社会保険労務士を探す
掲載情報をご確認のうえ、相談する社会保険労務士をお選びください。
相談や申請支援を依頼する場合は、相談者と各社会保険労務士または所属事務所との直接契約となります。
ご確認ください
日常生活の困りごとは、障害の状態を確認するための重要な情報の一つです。
ただし、このページの項目に当てはまる数や、整理した段階だけで、障害年金の受給可否や障害等級が決まるものではありません。
実際には、傷病ごとの障害認定基準に基づき、診断書、病歴・就労状況等申立書、検査結果、治療経過などから総合的に審査されます。
正式な認定基準やご自身の手続きについて確認したい場合は、年金事務所、街角の年金相談センター、または障害年金を扱う社会保険労務士へご相談ください。